イーストエンド国際ギターフェスティバル2014
2014-02-12


やはり、初めて聞くコンクールはかなり予想がずれます。そこで、なぜ北村が一位になったのかと考えた時、いろいろと分かることがあります。秋田が弾いたバッハの1006《プレリュード》、《アクアレル》の二、三楽章はかなり難曲です。そのため私は、それを見事に弾いた秋田にはテクニックを5点、《コユンババ》を少し間違いながら弾いた北村には2点をつけたのです。しかし、それぞれの曲の難しさを知らない、ギター以外の審査員には、どちらも同じように難しい曲に響いたことでしょう。しかも北村は自信を持って、はっきりと隣りのフレットを弾いていたりしたので、これは間違いに聞こえなかったかも。つまり、ギター以外の審査員によるこの二人のテクニックの点数は、差がなかった可能性があります。また私は、難曲に見事な表情を付けたのと、比較的易しい《コユンババ》で表情を付けたのでは点数的に差を付けました。ただこれも、非ギター審査員にとって、同じ表現力と感じたかもしれません。一方、音色で考えると、北村の方に明らかに分がありました。

それぞれの項目で差がついたとしてもほんの数点で、上記のような捉え方があり得ることを考えると、北村が一位を取ったのは非常に納得できます。他の予想がすれた人たちも、そういった採点方法による影響でそうなったのだと思います。また、井本が入賞しなかった理由は、もしかしたら左手の雑音にある可能性もあります。他の人がほとんど左手の雑音なしに弾いている中、その音を出してしまっているのは、テクニックがないと思われたことでしょう。ちなみに藤原も左手の雑音が大きかった。こういった雑音をいつまでも出していると、これからはコンクールの上位入賞ができなくなるのかもしれません。ただ、この審査方法は、せめてそれぞれの項目を15点満点とかにして、もう少し点数差が現れやすいようにしたら良いのではと、思ってしまいました。

さて、コンクールが終わってついにペロワのコンサートですが、それが始まる前に、ひとつのドラマ(事件?)がありました。

向かいのレストランは、雪のために早く人を帰したのか、厨房一人、ホール一人の体制でいました。そこへ20人以上の人が、休憩時間の間にさっさと食べようと思いながら入り、中の数人が「さっきから待っている。コンサートが始まってしまう。」などと言い寄るものだから、店員は大混乱。ホールのおばちゃんは軽く切れていましたね(笑)

ペロワのコンサートは圧巻でした。私が高校の頃、友人と一緒に、ギター界でもしっかりした重厚な曲だけのコンサートがあって欲しい、と思っていた、そのコンサートが実現されていたのです。最近、そういったプログラムのコンサートが出てきてはいるものの、そのプログラムでなおかつ、最後まで惹きつけ続けられるというのは、並大抵の技量ではありません。楽章や変奏の間を全く空けない演奏スタイルも、ずっと誰かにそう弾いてもらいたいと思っていました。よく、attaccaに近い形で弾かれるべき楽章の前に調弦が挟まるのが聞かれますが、それはその曲の全体像を楽しみたい私にとって苦痛なのです。

ただ、どうしてもギターの場合は調弦が狂って来ます。ペロワの場合も当然それはあり、結構何分間か、調弦の狂いのために楽しめない時間が正直ありました。そこへまた6弦の音が上がってきて、さすがに耐えられないとなった時に初めて、彼は変奏の最終音を抑えたまま、右手で調弦を変えていました。願わくばもっと早い段階で、変えて欲しかったものです。このスタイルで演奏する人は、山下和仁さんのように、いつでも曲中で調弦が出来ないとダメなのかもしれませんね。そこまで含めてギターのテクニックなのかも。

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