ベトナムギター漫遊記その二
2006-06-26


ふー、やっとベトナム二日目の日記。

二日目は朝から国立音楽院へ。ボッティリエーリさんが、一番良く弾ける4人にレッスンをする。いわゆるマスタークラスというやつだ。14才のアン君がコユンババを弾き終わり、さあ、どんなレッスンになるのかと楽しみにしていたら・・・。マシアーニさんに向かって「他にも習いたい生徒がたくさんいるので、別室でレッスンをしてくれないか」というオファーが。しかし彼は英語があまりできない。ということで私も通訳として一緒に移動。ああ、ボッティリエーリさんのレッスンを聞きたかった。

5階にあがると、日本で言うと中学・高校にあたるコースの生徒たちが。そしてマシアーニさんが日本語でしゃべり、それを私が英語に、それをまた向こうの先生がベトナム語に、という怪しいレッスンが始まった(笑)。当然のことながら、なかなかうまく伝わらない。途中から日本語〓英語変換は飛ばして、私も私なりの意見を最初から英語で言い出した。そしてマシアーニさんと私による共同レッスンが始まったのだ。人にレッスンをするなど約20年ぶり。

ところがしばらくすると、英語の分かる先生が「これから3人教えなければならない。でも彼女(と生徒の一人を指差しながら)も英語ができるから」と言って中座してしまった。その彼女、ハングさんは日常会話くらいは分かるようだが、音楽用語など何も分からない。レッスンは自然と、語るよりも弾く方へ。まず生徒が弾いているように弾き、「This, you. No good.」とわかりやすく言って、次にお手本を弾く。これでスムーズに理解してもらえるときはあったが、やはり言葉が必要なときもあった。

「ロシータ」「スペインの微風」「舟歌」など、初中級者には最適の曲が並ぶ中、「アラビア風奇想曲」とソルのOp.15の「ソナタ」を用意してきた子がいた。それくらいの曲になると、言葉でも結構伝えたいことがある。しかもその子の「ソナタ」の楽譜は、ものすごくかすれたコピー譜。生徒全員がオリジナルの楽譜を買うことができず、コピー譜を使用しているのは仕方ない。でも、これだけかすれていると臨時記号が見えないでしょう! 実際、その子はかなり音を間違って読んでいて、まずそれを直すことからレッスンが始まった。そのレッスンの最後に、「ソナタ」の途中にあるリピートの意味とか、この曲に関する全般的な情報を求められた。これを、英語のよくわからない人に対して伝えるのは結構難問だった。私が今まで英語を話すとき、いつも自分より相手の方が英語ができた。なので、私は私なりにとにかく伝えれば良かったのだ。しかしこのように英語がよくわからない人に対して、いかに分かりやすく話すかというのは、未知の体験だったのだ。この後も数日過ごして得た結論は、シンガポールイングリッシュという、簡単な単語を文法を無視して並べる英語の方が、誰にでもよく通じるということだ。

音楽院でのレッスンが終わると、夜の演奏会まで練習タイム。ベトナム・日本交流センター、略称VJCCで19:30からコンサートだ。ここで、開演少し前からスコールが降り出した。基本交通手段がバイクなので、これは集客にものすごく響く。結局15分遅れで始まったが、かなり空席が目立つ。

前半は、今回の企画を立ててくれたベトナムに住む日本人、渡辺さんが率いる四重奏(他3人はベトナム人)で「コンドルは飛んで行く」「スワニー川」、ベトナム・日本の民謡、その他、ベトナム人ソロによる「アストゥリアス」、ベトナム民謡などが奏でられた。その間に雨はやみ、客席はどんどん埋まっていつの間にか満員に。今回の旅行で3回のコンサートに出たが、いつも扉は開いていて出入りが自由だった。曲中であろうと、マイクを使用していなかろうと、そんなことは関係ない。こちらにはまだあまり静かに聞くという習慣がないようで、渡辺さんは、自分が真剣に集中して聞いているときに、いきなり「こんばんは」などと声をかけられて(もちろん曲中に!)若干困っていると言っていた。


続きを読む

[ギター]

コメント(全0件)
コメントをする


記事を書く
powered by ASAHIネット